グローバルビジネスに効果的な研修とは
/By Shiho Baisho
グローバルビジネスを推進するために、みなさんはビジネストレーニングやワークショップに参加したことはありますか。国際舞台で活躍しているビジネスパーソンは、どのようなスキルを身に付けているのでしょうか。日本企業のグローバル展開を支えるために数多くのビジネストレーニングを提供してきたSaga Consulting社のベストプラクティスを確認しながら、私たちが認識すべきこと、今日から心がけるべきことを探ります。
INDEX
②国内で優秀な社員が、グローバル案件で成果を残せないのはなぜか
①グローバルビジネスに関する企業研修はどのように変わったか
Saga Consulting社は、長年にわたり、コミュニケーションの観点から日本企業のグローバル化を支え、多くの日本のビジネスパーソンに企業研修を提供してきました。独自研修プログラムを開発し、自身も講師として最前線に立つプリンシパルコンサルタントのアンソニー・グリフィンは、依頼される企業研修の内容がこの数年で変化していることを肌で感じていると言います。同社が企業研修を開始した当初は、グローバルスタンダードとしてのマーケティング、人事、ビジネスマナー、会計など研修を依頼されることが多く、ワークショップ形式で行っており、参加者のグローバルビジネス経験値も様々でした。それが現在では、もうすでにグローバルマーケットで活躍しており、語学も堪能なマネージャーやエグゼクティブ層が、自身と企業の成長の為に、もう一歩踏み込んだより具体的なコーチングやトレーニングを受けるようになってきていると同氏は説明します。例えば、以下の内容に特化した専門コースをピンポイントで受講し、異文化コミュニケーションのノウハウを習得することで、受講者が自身の仕事環境の中で多様なチームメンバーを巻き込み、プロジェクトを推進する力、ビジネスコミュニケーション力を高めています。
グローバル案件における効果的なプレゼンテーションのトレーニング
ビジネスメールライティングのサポート
国際的な場でのネットワーキングとパーソナルブランディングのサポート
交渉術を高めるコーチング
受講者の具体的な業務に寄り添ったトレーニングは、時には皆さんの事業や業務そのものの改善、改革のお手伝いに結び付くという嬉しい効果もあります。Saga Consulting社ではビジネストレーニングが、そのまま別のコンサルティング案件につながることもあります。例えば、企業研修を提供したお客さまメンバーと、そのまま共にマーケティングの戦略策定を行い、コンテンツ企画から、運営まで行うという流れで、もちろん逆もあります。これは人材への投資がいかにビジネス拡大に直結しているかを物語っています。同社は、ビジネストレーニングとマーケティング、特にデジタル戦略のコンサルティングサービス両方を提供するブティックファームである故、昨今の具体的なイッシュー(課題)をテーマとする企業研修のリクエストに対しより柔軟に対応できるという強みがあります。さらにはデジタル化の後押しもあり、研修を研修だけで終わらせない企業が増えています。特に多いのは、同社のデジタルマーケティング・コンサルティングサービスを活用し、ソーシャルメディア戦略の策定から具体的なアカウントの立ち上げ、管理運用レギュレーションの設定を完了させ、さらに同社のビジネストレーニングによって、社内チームのコミュニケーション能力を高めソーシャルメディアを効果的に活用するトレーニングを行うという実践的なトレーニングです。もちろん、お客さまの予算によってお手伝いする範囲は異なりますが、日々の業務における具体的な課題と、人材育成を同時にアジャイルに進めていくやり方は、ビジネススピードを上げることにも貢献しています。
②国内で優秀な社員が、グローバル案件で成果を残せないのはなぜか
引き続き、企業研修の実績からアンソニー・グリフィン氏に原因を導いてもらうと、それは、多くの優秀なビジネスパーソンがグローバルな舞台で活躍できていない理由自体を見誤っているということです。誰もがビジネス上のコミュニケーションの問題を抱えている際、それは、自分の語学能力が足りないことが原因であると考えやすいが、これは誤りなのです。同氏は、このケースを "English scapegoating"(英語へのスケープゴーティング)と呼んでいます。この問題は、グローバルビジネスにおける経験の豊富さや、英語力の高低に関わらず多くの方に起こっています。自分はネイティブスピーカーのように英語を話せない、聞こえないからグローバルな舞台で活躍できない、というのは誤解です。率直に言えば、国際的なビジネス文化に関する経験や理解の不足が原因なのです。経験とは、例えば異文化環境での効果的なプレゼンテーション、ネットワーキング、ミーティングの実施などです。Business Success Japanのポッドキャストで紹介したように、グローバルビジネスでの苦労を英語のせいにしてしまうと、人々は自分のコンフォートゾーンから抜け出せません。日本では英語学習用のツールや試験がたくさんあり、それらに取り組むことで、自分の欠点を克服しているように感じることができます。しかしそのソリューションはグローバルビジネスにおける問題を本質的に解決しているのでしょうか。英会話のレッスンや標準化されたテストに向けた学習は、個々人の国際的なビジネス能力を効果的に高めているとは言いにくいでしょう。日々の業務を英語で行うという改善すべき真の問題が、水面下に残っています。もちろん適切な英会話スクールで練習を行うことは無駄とは言いません。しかし、実際の経験は、練習を上回る効果があります。賢く効果を出すには、実際の経験を本番外で行うことでしょう。海外での交渉やプレゼンテーション、人脈作りを経験した人に伴走してもらいながら、経験を積むことが真の問題を解決し、グローバルな舞台で活躍する鍵となるのです。
③グローバルコミュニケーションの力を、本当に全てのビジネスパーソンがもてるのか
全てのビジネスパーソンに可能性がある。とアンソニー・グリフィンは即答します。学ぶ意欲があり、トレーニングに打ち込めば、誰でもグローバルビジネスパーソンに必須のコミュニケーション力を伸ばすことができます。確かに、例えば性格が外向的であること等、グローバルパーソンへの成長速度を速める要素はあるかもしれないが、もちろん内向的な人が成功するために活用できる戦術もたくさんあります。例えば、内向的な方が国際的なネットワーキング・イベントに参加する必要がある場合、その場で最も外向的で話し好きな人たちと競争しようとしてはいけません(しないとは思いますが)。彼らは他の外向的な人に囲まれていることが多いため、内向的な方がそのグループと関わろうとすると、とてつもなく委縮しかねない状態になります。そのような時はまず、その場にいる他の静かな人を探して話しかけることが賢明でしょう。どのイベントでもそういう人はいるもので、声をかけられた人は、相手に感謝するはずです。次第に2人ともその環境に馴染み、そのあと一緒に他の発言が多い外向的な参加者に声をかけてみて、交流を広げていくことがコツなのです。このような内向的な人がビジネスで成功するためのコンテンツは、昨今ベストセラーとなっている『静かな人の戦略書』も含め多くあり、国内外でさまざまな性格の人がビジネスで成功できるということを証明しています。
④デジタルが変えるグローバルビジネススキルの性質
グローバルビジネス力の基礎となる部分は、第2項で紹介した国際的なビジネス文化に関する経験や理解をするということで今も昔も変化はないものの、近年のデジタル世界が業務に与えるインパクトは間違いなく大きいということは多くのビジネスパーソンが認識しているでしょう。そのためSaga Consulting社では実務的な細かい内容にも踏み込み、研修を行っています。ZoomやMicrosoft Teamsなどのオンラインミーティングやプレゼンテーションソフトはもはや世界中のビジネスプロフェッショナルにとってスタンダードとなっており、もちろん使いこなす「スキル」が必要となります。プレゼンテーションを成功させるためのワークショップ型の研修では、オンラインでのプレゼンテーションでプロフェッショナルに見せる方法についてアドバイスします。
また同時にデジタルを活用した情報発信のスキルについても高める必要があります。特にLinkedInの重要性は高まり続け全世界での利用者数は10億人を超える勢いです。 グローバルビジネスでは企業間のつながりも個々人からスタートする場合があり、ネットワーキング力の有無が鍵となる場合があります。つまりLinkedInは潜在的なクライアントやビジネスパートナーがあなたを探す最初の場所のひとつとなり得るのです。LinkedInにおける情報発信スキルもトレーニングで伸ばすことが可能です。特にB2Bの分野でLinkedInを活用していく場合、自身の説得力のあるパーソナルブランドを確立する必要があります。
⑤今日から実践!グローバルコミュニケーション力を高める方法
ビジネスパーソンとして国際舞台で活躍するためには、コミュニケーション力は欠かせません。しかし、いきなりそのようなビジネストレーニングに飛び込むには勇気が必要です。仮に企業研修のような機会に恵まれない場合でも、できることはたくさんある。とアンソニー・グリフィンは説明します。まずはコミュニケーション力や自身の性格特性の把握の大切さを忘れないことが重要で、そして積極的に「聴くこと」から始めるとグローバルコミュニケーションがスムーズになります。やはり聴き上手な人が好まれるのは万国共通です。どなたでも今日から実践できるポイントとして同氏が強調するのは、日本語でも英語でも、アクティブリスニング(積極的な傾聴)を行い、そして共感的であることです。初対面の人と会うときは、アクティブリスニングを用いて、その人について何か共感できることを知ることで、より印象深い出会いが生まれます。積極的な傾聴によって明らかになった共通点は、仕事でもプライベートの趣味でも何でもいいでしょう。焦らず、徐々に実りある関係を築くことがコツであると同氏は自身の経験から語ります。
文化を超えて共有できる親近感のある経験を見つけることは、障壁を取り除き、世界中の人々とつながる鍵となります。まさにこれがグローバルコミュニケーションなのです。
最後までお読みいただきありがとうございます。