マイケル・ウィリアムソン単独インタビュー:YouTubeで自分のパッションから収入を生み出す方法

By Shiho Baisho

この数年、YouTubeを取り巻く環境は激しく動いています。ユーチューバーやチャンネル数の増加、パンデミック前後でのライフスタイルの変化と総視聴時間の急激な変化、企業による広告宣伝予算の媒体配分の変化、そしてTikTokに代表されるショート動画の人気の高まりによる視聴者の分散。この激動の中、ユーチューブの収益化が更に難しくなり、エコシステム存続すら危ぶまれる声が上がる一方、コンテンツ界に、ようやく健全な競争がもたらされたという声もあります。

コンテンツや情報発信に関わる私たちは、このような激動の時代にどこに軸足をおくべきなのでしょうか。今回は、日本企業のSNS活用について長年コンサルティングを行ってきたSaga Consultingのアンソニー・グリフィン自身が、YouTubeのなかでも特にコンテンツ数が多いゲーム実況関連で、コアなファンを多くもつユーチューバー、マイケル・ウィリアムソンに単独インタビューを行います。

 INDEX

①はじめに:なぜコンサルタントがユーチューバーにインタビューしたのか

②まずはここから:YouTubeを始める

③裏側をのぞく:チャンネルの成長と収益化への道

④困難を乗り越えて:ツール・ティップス・アドバイス


①はじめに:なぜコンサルタントがユーチューバーにインタビューしたのか

経営プロセスに携わる方、またクリエイターとして自身の創造性を追求し最終的には収益化を目ざす方、ソーシャルメディアのコンテンツ界には様々な立場の方がいます。しかし皆に共通して重要なことは、投資収益率の視点なのです。フォロワー数、ブランド認知度、広告収入シェア、あるいは売上など、皆さんが選んだプラットフォームは、皆さんが費やした時間、労力、お金に対してどれだけの価値を与えてくれるのでしょうか?これはコンサルティングを行う者の基本姿勢でもあります。

企業のソーシャルメディア活用を支援する立場として、B2B企業のオーガニックなブランド成長に貢献するためにLinkedInの活用を私たちはまずはサポートします。しかし、事業の方向性や最終目標、また担当者や演者の能力によっては、YouTubeの方がポテンシャルが高い場合もあります。そして、ソーシャルメディアの世界でYouTubeは最も認知度と信頼性の高い広告収益共有モデルをもち、そのモデルによってクリエイターが収入を得られる優れた仕組みです。経験豊富なコンテンツマーケッターは、商品やサービスに関する情報をおもしろく見ごたえがある動画により世間に広め、間接的に販売につなげています。このエコシステムが従来の有料広告モデルを覆し、巨大な投資を呼び込んでいるのは周知の事実でしょう。そしてコンサルタントとして興味深いのは、この巨大なエコシステムをもつYouTubeは、優れたシステムだけではなく、個人個人のクリエイターや企業担当者が、各々のパワーとポテンシャルを積み上げたものだということです。現在、YouTube攻略に関するハウツーコンテンツは多数あるものの、やはり個人のベストプラクティスに今一度フォーカスをあて、学ぶ必要があると考え、長年の友人であり協力者であるマイケル・ウィリアムソンへインタビューを行いました。彼はIT分野にてフルタイムで働きながら、YouTubeチャンネル「The Mic Will Experiment」をコアなファンに愛されるチャンネルに育て、2年足らずで収益化させました。企業の情報発信の観点からも、クリエイターを目ざす観点からも、彼がどうやってこれを達成したのか学ぶことはとても重要です。

②まずはここから:YouTubeを始める

アンソニー・グリフィン(以下アンソニー):

ご自身のチャンネルを立ち上げたきっかけについて教えてください。 

マイケル・ウィリアムソン(以下マイケル):

私のチャンネルは主に任天堂のビデオゲームをテーマとして扱っています。チャンネル登録者の年齢層は幅広く、13歳から55歳で、中には55歳から64歳の人もいます。チャンネルはまだ比較的新しいですが、最小限の投資で収益化という、競争が激しい現在のYouTubeにおいてはなかなか難しい成果を残せていると考えています。

このチャンネルを立ち上げたきっかけは、YouTubeを観ていた時に自分にも他のゲーマーに伝えたいことや共有したいことがあると気づいたことです。また、自分のチャンネルが家族、家計をサポートしたり、経済的に自立できるようになれば嬉しいという気持ちもありました。また、私は人生の大半を独学で音声模写のトレーニングに費やしてきたので、まだアマチュアですがYouTubeチャンネルでその技術を活用することが生産的だと考えたこともきっかけのひとつです。

 

アンソニー:

チャンネルの立ち上げ時のエピソードやそこから学んだティップスはありますか。

マイケル:

ひとつ面白いのは、私は最初、中古品を紹介するチャンネルからスタートしたことです。私のチャンネルは、2017年に作成したオリジナルのビジネスプランから発展してきました。計画には2年以上費やしましたが、実はこれはあまりおすすめできません。私自身は、動画を投稿する前の企画の段階で、私はロゴやバナーを作り、コンテンツをブレインストーミングし、スクリプトまで書きましたが、実際は動画を制作・投稿しながらでもそれらのプロセスすべてを行い、チャンネル立ち上げまでのリードタイムをもっと短縮することができたと思います。ですので、まずはYouTubeのエコシステムに飛び込んで、映像制作をやりながら構成をブラッシュアップしていくことをお勧めします。なぜなら、そうすればチャンネルへのファンベースを築き始めることができるからです。特に、昨今盛り上がりをみせるYouTubeショート動画のカルチャーを考慮すれば、ショート動画を素早く投稿することでマーケティング効果を狙い、ファンベースを拡大し、最終的に登録者増につなげられます。YouTubeショートは、新人YouTuberにとって非常に作りやすいものです。時には、ためにしに投稿したショート動画が注目を浴び、視聴数を稼ぐとともにYouTuberの露出を増やし、その結果コンテンツの方向性が定まることさえあるのです。たとえ登録者数が50人未満であっても、視聴回数などの数値データをみて、決断をすることが重要です。

③裏側をのぞく:チャンネルの成長と収益化への道

アンソニー:

収益化達成までの道のりを教えてください。どれくらいの時間がかかり、チャンネルにどれくらいの投資をしましたか? 

マイケル:

収益化にいたるまではとても壮大な物語があります。2023年6月現在では、1,300本以上の動画と2,000人近いチャンネル登録者がいます。
ファンを増やそうとする人への最大のヒントは「仕事をする準備をする必要がある」ということです。どういうことかというと、私たちは長い間、平均して1本の動画につき1人しか新しい登録者を獲得できませんでした。今は、YouTubeショートのおかげでだいぶ改善されました。
コンテンツのテーマや目的によって、登録者数増のペースは異なります。もしあなたが何時間もかけて動画を作成した場合、YouTubeでは一般的に再生回数が多くなる傾向があります。特に、視聴者やYouTube内のアルゴリズムにおいて目次の役割を果たす、章ごとに分類された完全な説明文を動画に対して作成した場合は登録者が増えやすいです。おそらく動画1本につき1人以上の購読者を獲得できるだろう。私は1,000の購読者を獲得するのに1,000のビデオを要しましたが、コンテンツ制作や投稿準備に努力を惜しまないYoutuberは20から30本のビデオでそれを行うことができるかもしれません。いずれにせよ、Youtuberには努力が求められるのです。自分のスケジュール、生活、目標に合わせたルートを選べばいいのです。

私たちのチャンネルを飛躍させたのは、カウントダウンタイマーの動画というものでした。YouTubeでは一般的に、ほとんど、あるいはまったく今まで投稿されていないよう新鮮なコンテンツを提供できれば視聴数が増えます。カウントダウンタイマーの動画は、新しいゲームの発売までのカウントダウンを行い、視聴者がチャットをして期待感を共有する場として活用されました。このアイディアはThe Small Momentsと呼ばれる方によって出されました。The Small Momentsは私たちのチャンネルにボランティアとして参加し、30,000ビューを獲得した最も視聴数を稼いだビデオの制作責任者です。このアイディアにより、私たちのチャンネルは、YouTubeの視聴時間4,000時間のしきい値を超え、収益化を達成することができました。The Small Momentsからのアイディアのような幸運は、全てのYouTuberが手にできるものではないですが、このことが視聴者をいかに巻き込み、惹きつけることが重要であるかといいうことを物語っています。


このように、私たちが収益化するまでには2年あまりかかりました。時間を金額に換算すると、これは割に合わないように思えるかもしれません。しかし、もしあなたが私のように、好きなことをやって最終的にわずかであっても報酬を得るという考えが好きなら、それは素晴らしいことではないでしょうか。そしてもちろん、チャンネルが成長するにつれてスポンサーがつく可能性もあるのです。
投資について、具体的にお話すると、私は良いスマートフォン、リングライト、三脚から始めました。この2年間で使った金額は、おそらく1,000ドル以下でしょう。私がトピックとして取り上げたゲームのほとんどは、Keymailerという会社から提供されたもので、同社は、私が1,000人の登録者を獲得する前でさえ、レビューをつけてくれました。Keymailerが常に最新のゲームを発売するとは限らないが、素晴らしい独立系ゲーム開発者と交流し、関係を築くきっかけになっています。



④困難を乗り越えて:ツール・ティップス・アドバイス

アンソニー:

チャンネルを成長させる中で、どのような困難に直面しましたか?

マイケル:

YouTubeチャンネルの運営をするなかで燃え尽き症候群や動画の視聴回数に関するストレスはとても辛いものでした。特に視聴者数の増減を見るのは本当に心が痛みます。幸いなことに、The Small Momentsのようなチームや私のDiscordコミュニティのメンバーが、動画を制作し続けるモチベーションを与えてくれています。また、友人や配偶者、ファンからの励ましの言葉も私を支えてくれます。

アンソニー:

YouTubeチャンネルを成功させるリソースについてうかがいます。必要なツール、ソフトウェア、その他のリソースは何ですか?

マイケル:

オープンソースのツールを使うことをおすすめします。できるだけお金をかけず、アプリのサブスクリプションも最小限に抑える。

たくさんストリーミングしたいなら、Streamlabs Ultraがいいでしょう。カスタム・エレメントが含まれていて、他のチャンネルと差をつけることができます。また、TwitchとYouTubeの両方で同時にストリーミングすることで、収益化の可能性を高めることもできます。さらに、制作コストを抑えたい方には、OBS Studioがおすすめです。またAdobe Expressのようなサムネイルをデザインするアプリもあればさらにいいと思います。

編集ソフトに関しては、私はVideoshopというスマホアプリを使っています。このアプリは日進月歩で改良されており、PCと同等の機能を備えていると思います。スマホからの編集の方が手間がかからないので、私はそのアプリを使って編集しています。

 

アンソニー:

最後に、あなたのようにYouTubeチャンネルを育てたい個人や企業へのアドバイスはありますか?

マイケル:

先ほどの話に戻りますが、働く準備をするということです。ただし、目標によっては気をつけなくてはならない点があります。

 もしあなたが中小企業を経営していて、YouTubeチャンネルですぐに結果を出したいのであれば、今日からでもYouTubeショート動画を作り始めましょう。このショート動画で正しくターゲットにアプローチすれば、あなたの製品やサービスのバイラルキャンペーンによって視聴数を伸ばすことができるでしょう。まさに、コストをかけずにマーケティングができる機会です。

トレンドやコンテンツについて詳しい人に有料で相談する必要があるかもしれないが、このコストはそこまでかからないでしょう。それでもそのような予算がない場合は、トレンドを観察したり、他の人がやっていることを見たりして、自分で研究することもできます。例えば、ユーチューブの音楽アーティストの多くは、これまでツアーの開催時に申し込みを得たり、ビルボードにチャートインしたりと、レコードレーベルを通さずに多くのことを成し遂げています。それがまさにYouTubeの話題になったショート動画や投稿動画の力なのです。

もしフィットネスや恋愛をテーマにしたYouTuberなら、私よりも飛躍的にチャンネルを成長させるかもしれません。これらのトピックは、強力なニッチ分野で、すぐに立ち上げることができるでしょう。

YouTubeにおいて、ゲーム分野は競争の激しいニッチ市場であり、お伝えするポイントとしては、そのコンテンツのニッチ度合いが高すぎるか低すぎるかについてタイミングをみて考えることです。再生回数や登録者数が伸びない場合は、コンテンツのニッチなトピックが広すぎるか狭すぎるかを考えてみてください。例えば、ポケモンのゲームについてだけ話すのではなく、任天堂のゲームすべてに広げることができます。自身のチャンネルのスイートスポットを見つけ、何が合っているかをみる必要があります。

最終的には、個人で活動するYouTuberは、それが好きだからコンテンツを作るのであって、マネタイズにこだわる必要はないでしょう。そのよう姿勢で続ければ成功は必ずやってきます。また多くの会社が挑戦しているように、企業としてYouTubeチャンネルを正しく運用できれば、その効果は大いにあるでしょう。他のマーケティングオプションに比べ、一般的に資金面や人的リソース等における参入障壁も低く投資対効果を測りやすい経済的な意味もあると言えます。


 最後までお読みいただきありがとうございます。