B2B領域でもパワフルな「ソーシャルの力」

By Shiho Baisho

LinkedInが創業して20年以上経つことをご存じでしょうか。5年、10年でサービスが様変わりするテクノロジーの世界では、20年以上もビジネスユーザに愛され続けている「ソーシャルの力」に驚かされます。この力を、個人間のつながりだけではなくビジネスで活用するというグローバルスタンダードを見聞きしたり、ご自身の仕事で取り組もうと考えている方もいらっしゃるでしょう。

今回は、Saga Consulting社のデータや知見を活用し、ビジネスとりわけB2B領域での「ソーシャルの力」について考えていきます。

 INDEX

①B2B領域でのソーシャルメディアの利用はどの程度広がっているのだろうか?

②日本企業が事業規模に関係なく実践できるソーシャルメディアB2Bマーケティングのポイント


①B2B領域でのソーシャルメディアの利用はどの程度広がっているのだろうか?

Insider Intelligenceによると、米国市場においてソーシャルメディアは、ディスプレイ広告、検索連動型広告、ストリーミング放送といった一般的なデジタル広告をおさえ、収益を上げるために最も効果的なB2Bマーケティングチャネルという結果が出ました。

これはまさに「ソーシャルの力」の特徴のひとつであるであるソーシャルメディアの双方向性が貢献していると考えられます。B2B領域における双方向なコミュニケーション(?)、そのようなマーケティングが効果あるのか(?)と現在でも国内市場においては疑いの目を向けられることが多いと感じます。それは「B2Bマーケティング」という表現を文字通り受け取り、企業間の味気ない無意味なマーケティング活動を想像している方が多いからかもしれません。しかし、当たり前のことではありますが、企業は人によって作られ、支え、運営されていることをマーケティングにおいても忘れてはなりません。結局のところ、ビジネスパーソンである人が、私生活と同じように、組織に対して購買の意思決定を行っているのです。これに気づくことは本当に重要なポイントで、さらにはソーシャルメディアマーケティングにおける流行や効果性を含め、B2CとB2Bのマーケティング戦略には重なる部分が多いとSaga Consulting社プリンシパルコンサルタントのアンソニー・グリフィン氏は語っています。

もちろんLinkedInだけに肩入れするのではなく、YouTubeやFacebookなど巨大プラットフォームを含む様々なソーシャルメディア企業がそれぞれ技術革新を重ね、B2Bマーケティングに活用できるツールを多く提供しています。ほとんどのプラットフォームで、製品、業界、ターゲット市場に応じて、B2Bマーケティングを展開することができ、皆さんも企業による投稿や広告を見る機会がとても増えているでしょう。しかし、グローバル市場においてB2Bデジタルマーケティングで最も人気のあるプラットフォームとして、多くのリソースがLinkedInを挙げており、私どもの経験からもLinkedInを用いたB2Bマーケティングの効果は光るものがあります。

正確なパーセンテージは調査元やサンプルサイズなどによって異なりますが、LinkedInはB2Bマーケッターに選ばれるプラットフォームとして常にトップに立っています。同社が独自に行った調査では、他のソーシャルチャネルと比較して、B2Bマーケターの82%がLinkedInで最大の成果を残したと考えており、またBusiness Intelligence社のレポートでは、2023年には世界中のB2Bマーケッターの80%がLinkedInを利用しているとし、この前述のデータを裏付けています。

LinkedInがこの分野で優位に立つのは、2003年の創業以来、「ビジネス」と「プロフェッショナリズム」が同社のブランディングに組み込まれていることからも納得がいきます。そして、テクノロジーの変化が激しい分野においても今日に至るまで、LinkedInがこのコンセプトから揺らいでいないことも、そのブランド確立の一助となっています。

Saga Consulting社が行うLinkedInのセミナー内で取り上げるように、LinkedInで最もユーザー数が多いアメリカにおいて、ユーザは利用するソーシャルメディアをプライベートのものと、プロフェッショナルなもので分ける傾向があります。したがって、ビジネスとソーシャルの交差点として独自性を高めたLinkedInの優位性を確固たるものとしています。

②日本企業が事業規模に関係なく実践できるソーシャルメディアB2Bマーケティングのポイント

Saga Consulting社では、ソーシャルメディアのサポートグローバルコミュニケーション・トレーニングを提供し、数多くの日本企業をサポートしていますが、特段B2Bソーシャルメディアに関連する以下の項目についてきめ細かくサポートし、企業側に「ソーシャルの力」の重要性を伝えています。

1.オーガニック・ソーシャルメディア管理(例:LinkedInで自社が運営する企業ページの管理)

2.プロフェッショナル・ソーシャルネットワーキングおよびパーソナルブランディング・トレーニング(例:LinkedInの使い方に関するトレーニング)

B2B領域でソーシャルメディアに取り組もうとされている企業様それぞれが「必要としているサービスレベル」を適切に見極め、アドバイスをもらうことが重要、とアンソニー・グリフィン氏は強調します。

極論を言えば、本当に人手が足りずソーシャルメディアマネジメントができない企業様は、Saga Consulting社を自社のバーチャルマーケティング部門と位置づけ、最初は全てを任せ、一緒に知見を得ていく方法でもいいのです。投稿する記事の作成(デジタルコンテンツマーケティング)、LinkedIn上でコンテンツをシェアし露出を高めていく活動、またパフォーマンスを分析するレポートの作成や中長期的なソーシャルメディア戦略の検討など、あらゆるフェーズでプロに伴走してもらった方が時間軸としても予算的にも適切な場合があります。

もちろん、上記のようなソーシャルメディアマネジメントの各フェーズにおいて、部分的に課題があることが明らかな場合は、ダイレクトにその課題の解決を相談しましょう。例えば、企業様側ですでに制作、投稿されたコンテンツの露出強化やフォロワー集めの相談、また現状のソーシャルメディア活動に対する評価フィードバック、改善点の提案などを依頼することも可能でしょう。

Saga Consulting社が長年多くの企業様とソーシャルメディアの改善に向き合う中で意外に即効性があるポイントとしては、企業様のソーシャルメディア活動を社内で広めていくことです。例えば、社員が自社のLinkedIn投稿を読んだり、社員自身もLinkedInで情報を得たり、コミュニケーションを行うことで、自社とのつながりが深まっていきます。さらには、社員個人が企業コンテンツをシェアしたりコメントすることで、LinkedIn内における企業ブランドを有機的に高め、その結果として企業として見てほしいページへの誘引を増やす素晴らしい効果も得られます。マーケティング活動のサポートだけではなく、社員の皆さんのソーシャル活動のサポートとしてLinkedInの初心者レベルの入門セミナー「Social Networking and Personal Branding on the Global Stage」もSaga Consulting社と企業様の重要な施策のひとつです。

日本で見てきた多くの企業様では、ソーシャルメディア専任の方がいるわけではなく、担当の方は様々な業務を兼任しながら本当に忙しく対応されています。アンソニー・グリフィン氏の実感値として、LinkedInであれば週に1度投稿を行い、継続できるならば、年間300~600人のフォロワーを獲得できるため、それを最初の目標とするがポイントです。そしてそれをベンチマークとして、投稿回数を増やしていったり、投稿内容を吟味することで目標に対し回り道をしなくて済むでしょう。最後に、重要な点としては自社の商品サービスや取り組み内容をたくさん投稿したくなる気持ちをぐっとこらえて、まずはコミュニティにいる人々がどのようなコンテンツに興味を持つか考えることです。プロが制作した素晴らしいコンテンツでも、オーディエンスが興味を持たなければ不要となってしまいます。コンテンツについては前述のとおり、コンサルティングを受ける効果が高いところですが、その時間がない場合は「人間にフォーカスしたコンテンツ」をまず作ってみるのも具体策としておすすめです。自社の社員にどういう人がいるのか、紹介するだけでもいいのではないでしょうか。(例 staff spotlights).

B2B領域においてもコミュニケーションにおける主体は「人」であるべきです。自社やお客様企業の中で働いている人を想像し、その人たちが必要としている情報や楽しんでもらうための身近なコンテンツを作り、少しずつコンスタントに働きかける(投稿)することがB2Bソーシャル活動における成功への鍵なのです。


 最後までお読みいただきありがとうございます。